類似業種比準価額と非上場株式の相続税評価(相続事業承継)【FP1級試験のコツ応用編】
近年は雨も雪も一度に大量に降ることに注意が必要になりましたね。こんにちは、rinkoです。
FP1級を受験する方からのよくある質問にお答えするFP1級試験のコツ。今回は「相続に関する相談は受けますけどー、相続の応用編って個人様向けって感じの問題じゃなくてとっつきにくいですー」という件についてです。
FP1級を目指す方の中でも、現時点のお仕事等が個人の家計相談が中心となっている方は多いです。一方で、FP1級の試験問題は中小企業のオーナーの事業承継に係るケーススタディが典型ですので、普段法人様やオーナー層と事業のお話を含めた関わりをしていないと触れないジャンルではありますね。
というわけで応用編の第五問は、「相続事業承継分野」です。計算方法が比較的最近改正されていますので、典型の問題をしっかりおさえておきましょう。
非上場株式の相続税上の評価
中小企業のオーナーの事業承継に係るケーススタディが多いと書きました。その中でも、そのオーナーの保有している非上場株式等を「贈与する、もしくは相続が発生することを想定して株価を算定する」という問いが出ることが非常に多いです。別の記事でもお伝えしてますが、近年いくつか改正されてますので、このケースが試験で出る可能性は高いと言えます。
これは財務2級(銀行業務検定)でも頻出のテーマです。筆者の個人的な所感ですが、財務2級での出題に比べると、ヒントが多めに感じますね。
応用編金融資産運用で触れた損益分岐点計算もFP1級の方がヒントが多めですので、FPとは、広く全般的な知識を求められるということかもしれませんね。
では株価の算定方式についてお伝えします。類似業種比準価額方式と、純資産価額方式による算定を行い、その比較によって算出する出題が殆どです(実務においては他の方式もありますので、基礎編対策として覚えておくようにすると良いでしょう)。
類似業種比準方式による株価の算定
似た業種の上場株式と、「配当・利益・純資産」の3点を比較して株価を算定する方式です。これ、この問題の山場です。この公式を覚えているかどうかで獲得できる点数が大分違います。
まず公式をご覧ください(公式は見やすくするため一部文字を省略しています)
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この公式の要素一つ一つを見ていきましょう。
①類株(類似業種の株価)
類似業種の株価は例示が出されますが、問題文中に出てくる数値で以下のうち「最も低い金額」です。
- 課税時期の属する月の平均株価
- 課税時期の属する前月の平均株価
- 課税時期の属する前々月の平均株価
- 前年の平均株価
- 課税時期の属する月以前2年間の平均株価
比較するポイントが5点と多いので、見落としが無いように注意が必要です。逆にひっかけとして5点以外のポイントの平均株価を出してくることもあります。
②類似3点セット(配当・利益・純資産の比較)
まず、この3点セットを比較するときには、類似業種の値も評価したい会社の値も「50円で1株とした場合の、架空の株数」をまず算出します。資本金を50円で割った数ですね。これは出題傾向として、本来の発行済株式総数とは異なる数になることが多いです。そして、3点セットである「配当・利益・純資産」は以下の式により比較算出される形になります。
評価会社の配当金 | 評価会社の年利益金 | 評価会社の純資産価額 | ||
_________ | + | _________ | + | __________ |
類似業種の配当金 | 類似業種の年利益金 | 類似業種の純資産価額 |
※全て、「50円で1株とした場合の、架空の株数」における、1株当たりの金額です。
そして、この3点セットの式は「FP1級の中でも唯一」計算式の中でも先に計算を行い、値の四捨五入まで完了させるものとなっています。※問題文中に指示があります。
また、3点セットを3で割ることも忘れないようにしてください。
逆に、他の問題では先に計算を完了させないようにしましょう。
③斟酌率
大会社:0.7、中会社:0.6(小会社:0.5)です。会社の規模ごとに固定値ですので、最初に公式に突っ込むことで間違いを防げます。会社の規模ごとの斟酌率の値は覚えておく必要があります。
④1株資本(1株あたりの資本金の額)
資本金の額から発行済み株式総数を割った額が、そのまま値となります。先ほどから公式では「1株あたり50円とした場合」でずっと計算していましたので、最後に修正するための数値ですね。
問題文中には「1株あたり○○円」などと記載されていたり、簡単に計算可能なように掲載されています。ちなみに、もし出題上本来の株式が1株50円だったとすれば、この数値も50円になり、(50円/50円=1)となるので最後は修正なし、ということになります。
純資産価額方式による株価の算定
純資産から株価を算定する方式です。公式は
{そ-(そ-ち)×37%}/発行済株式数
という、割とシンプルなものです。37%という数字は忘れずに覚えておきましょう。
そとちの中身は以下の通りです。
そ:相続税評価額による資産ー負債 ※この場合の「相続税評価額」は問題文では簡易的に明示されている数値を使うことが多いです。
ち:帳簿価額による資産ー負債
純資産価額方式の計算をさせる場合は、そとちを計算するための表はちゃんと出てきます。そをベースとしてそとちの「差額に37%をかけてから引く」という単純なことですが、混同しないように注意しましょう。
相続税評価額の最終的な算定
相続税評価額の最終的な算出を行う問題も多いです。大会社か、中会社(中会社のなかにも大中小あります)かによって、算定方法が異なります。
小会社もありますが、あまり出題されません。まずは大会社と中会社について確実に答えられるようにしておくことが合格への近道です。
- 大会社:類似業種比準価額、純資産価額のいずれか低い金額
- 中会社:「(類似業種比準価額×一定の割合)+{純資産価額×(1-一定の割合)}」と純資産価額のいずれか低い金額・・・「一定の割合」は中会社の「大中小」によって異なります。
※一定の割合→中会社の大:0.90、中会社の中:0.75、中会社の小:0.6
この中会社の「一定の割合」と、類似業種比準価額の時の斟酌率を混同しないようにしましょう。
規模が大きくなればなるほど、類似業種比準価額を参照する割合が高いという制度ですので、大会社の方が計算が少なくて楽です。問題文に「大会社」と書いてあったらサービス問題だと思ってください。
ちなみに確定ではないですが、純資産価額方式の方が高い額になりがちです。中会社の場合は特に、類似業種比準価額の計算や、割合を間違えないように注意しましょう。
文章題で出る可能性のある論点
このジャンルの文章題は、税制改正があった場合はその改正に伴うもの。そうでなければ非課税や課税特例の要件について問われることが多いです。
「非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予制度」は、先ほどもお伝えしましたが要チェックだと思いますね。
あとは、土地を保有している方の場合のケーススタディとして、「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」が出題されることもあります。
この辺りでしょうか。
まとめ
さて、FP1級学科シリーズ。今回は応用編の第5問、「相続事業承継分野」についての傾向をいくつかまとめてみました。いかがだったでしょうか。このジャンルは、うまくハマるときちんと点数が取れます。大枠を把握しながら勉強していけば決して怖くはありません。
【FP1級試験のコツ】のまとめページはこちら←興味がございましたら他の記事もご参照くださいませ。
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